教授 渡邊 太

1.教育に対する責任

私は本学において、文化に関する科目を主に担当している。社会学の立場から、文化の多様性と市民社会の理念についての理解を深め、異なる文化的背景をもつ他者を尊重し、多文化共生の態度を養う教育に取り組んでいる。

学校法人藤田学院ホームページ「教員紹介2023」

2.教育の理念

私は、本学の教育活動において、以下の3点を重視している。

1) 人権を尊重し、寛容な市民社会を構築する一員としての自覚を促すこと
2) 多文化共生の視点をもって地域社会に貢献する態度を育むこと
3) 学ぶことのよろこびを実感し、生涯学び続ける姿勢を獲得すること

3.教育の方法

上述の教育理念を達成するため、例えば「多文化共生論」(2年次、必修科目)では、次のような授業を実践している。
「多文化共生論」では、授業の到達目標として、①文化の多様性を理解した上で異文化を尊重し、差異を楽しむことができる、②多文化共生の理念を身につけ、その実現のために行動できる、③多文化共生の課題について自分なりに考え、主体的に取り組むことができる、以上の3点を掲げる。
授業の前半では、言語、食事、身体など複数のテーマから文化の多様性を学ぶとともに、偏見やステレオタイプ、国民国家の形成過程等について理論的に学び、自文化中心主義を相対化する視点を養う。授業の後半では、ヘイトスピーチ問題とマイノリティに対する差別問題をあつかい、人権の尊重、市民社会の理念、多文化共生の必要性について学ぶ。
各回のテーマは多岐にわたるが、いずれにせよ多様な文化を学ぶ楽しさと、切実な問題を考える切実さのバランスを取るよう心掛けている。
また、社会的なテーマに対する学生の関心を喚起するために、アクチュアルな時事問題を積極的に取り上げ、ニュース映像等の映像資料を効果的に活用している。毎回、授業終了の際にコメントシートを配布し、授業内容に関する質問や関連して考えた事柄についての記述を指示し、回収している。質問や優れた視点を示すコメントについては、次回の授業時に応答・紹介している。
事前学修を促すことを目的として、毎回、次回の授業テーマに関連するテキストを配布し、予習として読んだ上で授業に臨むよう指示している。
授業のまとめに際して、学修成果の獲得状況を把握するために、都市生活の中でカジュアルなヘイトスピーチに遭遇した体験に基づく小説家・温又柔氏のエッセイを題材として、①テキストを読んで感じたこと・考えたこと、②この場面に自分が遭遇したら、どうするかを考える課題を実施した(【ワークシート】)。回収した文章を読むと受講生ひとりひとりが多文化共生の課題を他人事としてではなく、自分自身と関連付けて考えていることがわかる充実した内容だった。

鳥取短期大学ポータルサイト「シラバス検索」

4.学生による授業評価

2021年度の授業評価アンケート結果をみると、「多文化共生論」(回答者31名)では、「私は総合的に授業に満足した」という項目に対して、「あてはまる」90.0%、「ややあてはまる」6.0%であり、ほとんどの受講生が肯定的に回答していることから、総合的な授業の満足度は高かったことがわかる。「毎回の授業で学習の目的や目標がはっきりと示されていた」という項目に対して、「あてはまる」90.0%、「ややあてはまる」10.0%であり、すべての受講生が肯定的に回答していることから授業の意図は明瞭に伝わっていた様子が窺える。
他方で、「私はシラバスに掲載された「到達目標」を達成することができた」という項目に対しては、「あてはまる」65.0%、「ややあてはまる」35.0%だった。すべての受講生が肯定的に回答しているとはいえ、他の項目に比べると相対的に「あてはまる」の割合が小さい。
また、「私はシラバスの「授業時間外の学習」の内容を元に、予習、復習などに積極的に取り組んだ」という項目に対して、「あてはまる」71.0%、「ややあてはまる」19.0%だった。同科目の2019年度の授業評価アンケートでの同項目の結果が「あてはまる」23.5%、「ややあてはまる」58.8%だったことから比べると、大きく改善されたことがわかる。事前事後の学修を促すため次回の授業に関連する資料を事前に配布し、授業までに読むよう指示する取り組みの効果があらわれたと考えられる。

5.教育改善への取り組み

授業見学をはじめとするFD活動には積極的に取り組んでいる。
近年は遠隔授業の経験を活かし、Google ClassroomをはじめとするICTツールを活用した教育改善にも取り組み、受講生が事後学修として活用できるオンデマンド教材の開発をめざし試行錯誤しているところである。
また、専門基礎科目「スタディスキル」の授業では、2022年度から、学科教員全員で執筆したテキスト『短大生のためのスタディスキル』(今井出版、2022年)を活用している。テキストの活用法をめぐって学科FD活動にも取り組んでいる。
講義形式の授業では受講生の集中力の維持が課題であり、アクセントや緩急のある授業をめざしている。

6.今後の目標

1) 短期的な目標
  1. 市民社会の理念を丁寧に伝える
  2. 人権を尊重し、差別を許さない態度を育成する
  3. 地域文化に対する関心を高め、地域への愛着を高める
2) 中・長期的な目標
  1. 教育活動を通じた地域社会のシチズンシップの向上
  2. 豊かな感性を育み、人間的成長を促す教育の実現
  3. 地域文化への愛着を通じた郷土アイデンティティの構築
最終更新:令和4(2022)年6月30日

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