助教 野田 諭
1.教育に対する責任
私は本学幼児教育保育学科において、心理学に関連する科目を主に担当している。「発達心理学」「子ども家庭支援の心理学」「子どもの理解と援助」などの科目を通して、子どもや家庭を発達心理学、臨床心理学の知見から理解・援助する視点を、専門職としての現場実践の経験も交えながら深めていく授業を展開している。
2.教育の理念
私は本学の教育活動において、以下の3点を重視している。
3.教育の方法
上述の教育理念を達成するため、以下の方法を用いている。
教育の理念1)に関連して、子どもの心理発達を捉えていく際に、学生自身の心理発達のプロセスも振り返りながら、実感や自身への気づきを伴った教育を展開している。また、現場実践の経験談と理論を結びつける授業を行い、一つの理論や視点だけでなく、多様な子ども理解の視点を持つ大切さを伝えている。
教育の理念2)3)に関連して、臨床心理学の一分野であるカウンセリングマインドの視点や、Rogersのパーソンセンタードアプローチの理論に基づき、自分も他者も大切にする視点を持ちながら、講義や演習の中で自己理解・他者理解を促進するワークシートやグループワークを実施している。また、互いを尊重し合う仲間作りを目的としたグループワークの中でエンパワメントされ、自己実現に向かう意欲を持てるように働きかけている。
4.学生による授業評価
2025年度前期の授業評価アンケートにおいて「発達心理学」の〈私は総合的に授業に満足した〉という項目は平均値を上回る3.72という結果であった。授業の内容は、学生がなじみやすいような題材を例に出すなどを心がけていたこともあり、学生の自由記述の中には、授業の進度や解説の分かりやすさに関しては評価があったが、授業に集中する環境を整えることへの意見が見受けられたこともあり、受講マナーの徹底と共にグループワークなどの回数を増やし、大事なポイントをメリハリを持って繰り返し押さえる必要があると考えている。また、「子ども家庭支援の心理学」の〈私は総合的に授業に満足した〉という項目は3.68という結果であり、学生の自由記述からは、こちらも同じく環境を整えることが課題としてあげられるが、事例検討など学生が自ら考える機会を提示する授業展開は満足度が高かったようである。次に、2024年度後期の「子どもの理解と援助」については、ワークシート等を使用したグループワークを中心とした授業展開が好評であった。一方で、〈私はシラバスの「事前事後学習」の内容を元に、予習、復習などに積極的に取り組んだ〉という項目は「発達心理学」で2.85と全体の平均値より低かった。この点に関しては、予習や復習を促すような課題提示を通した個々の学生の理解度の把握と、個別のフォローへの工夫が必要だと考えている。また、〈教員は学生からの質問や意見が述べられるよう配慮していた〉という項目はすべての授業において0.2以上平均より高く、学生それぞれの考えを小集団の中で議論し、表現する機会をより多く設定したことが要因と思われる。今後も多様な意見が集団に受け入れられる体験を通して、学生一人ひとりが主体性をより発揮でき、好循環に作用する授業の工夫をしていく必要があると考えている。
5.教育改善への取り組み
6.今後の目標
1) 短期的な目標
- 個々の学生の理解度に応じた授業内容の工夫や理解度を確認する課題提示、個別にフォローする内容について、一定の構造化を目指す。
- ICTを活用しながら、学生がアクセスしやすい授業環境作りに取り組む。
- 授業でのグループワークをより多く取り入れ、学生の集団帰属意識を高め、自己肯定感や主体性を育む。
2) 中・長期的な目標
- 学生が子どもの心理発達や対人関係の様相を体験的に理解するため、現場と授業を行き来する場を開拓し、学生の参加を計画していく。
- 上記のグループワークや日々の関わりを通して、受容と共感をベースにした、自分も他者も大切にできる保育者を育成する。学生がその姿勢を社会に出てからも大切にしていくことで、保育現場や地域での実践、人間関係にそのエッセンスが広がっていき、子どもや保護者が安心して子育てができる地域作りに貢献することを目指す。


