教授 宮脇 儀裕
1.教育に対する責任
私は、本学において、将来、建築士になることを目指す学生に建築・住宅に関する基本的な事項からより実践的な事項まで段階的に学習が深まるよう授業を展開し、建築士として求められる基礎的な知識、技術力を習得する教育を担当している。
主な担当科目の概要は以下のとおりである。
「住居学」では、人の生活の基盤である「住居」について、歴史や風土との関わりや防災、防火、長寿命化あるいは快適性の追求など、住居の計画に必要な基礎知識を習得することを目指す。
「建築法規論」では、建築基準法及び関連法規について、出来るだけ具体的にかつ基本理念に触れながら、建築計画上必要な法的条件が理解できるように知識を習得することを目指す。
「建築構造論」では、木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造等の建築物について、建築構法の観点から、安全性、耐久性、経済性を確保するために必要な基本的事項、知識を習得することを目指す。
「建築施工論」では、木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造等の建築物の建設に関する施工計画、施工法及び工事費の積算について具体例を踏まえながら学習し、基礎知識を習得することを目指す。
「建築材料実習」では、建物を構成している梁・柱・壁などの主要構造部材の性状や材料特性を学び、実験によってそれらの性状を確かめることを目指す。
「建築設計実習Ⅰ」では、身近な敷地を設定し、短時間でアイディアをスケッチや図面、模型等で表現する力を養い、基礎的な計画力を修得することを目指す。
2.教育の理念
私は、本学の教育活動において、以下の3点を重視している。
本専攻は、指定科目を履修し単位取得すれば、4年制大学卒業生と同等に建築士の受験資格が得られることが特色の一つとなっており、建築士を目指す学生たちのモチベーションとなっている。
一方で、4年制大学と同様の科目を2年間で学修するため、大量の専門的な情報に対して消化不良を起こす可能性があり、授業では、まずは「建築」の楽しさを伝え、関心を抱かせること、次に建築士試験の設問を正しく理解するための基礎知識、最新の情勢など、重要度に応じて繰り返し講義することとしている。
「住まい」、「建築」は豊かな人間生活を営む上で必要不可欠なものであり、それを設計または建設する人間となることへの責任の重さと社会的役割を自覚するよう教育する。
地域固有の歴史と伝統技能、技術と文化を尊重し、社会に出てからも、地球規模の自然環境と培った知恵と技術を共生させなど建築が果たすべき役割と責任を自覚するよう教育する。
3.教育の方法
前述の教育理念を達成するため、主な科目については次の方法により授業を進める予定である。
- 目標の設定:設計から施工、完成、維持管理、解体まで、建物の一生の中で、建築計画、構造、法規、設備の位置づけと重要性を知る。
- 授業の進行:テキストの文字や図だけでは理解しにくい専門的な内容について、スライド等により実例、実写、動画などを用いながら可能な限りわかりやすく伝える。
- 授業外時間での学習:常に自分の周りにある建物、インテリア、デザインに関心を抱き授業で学んだこととの関連性を見いだすよう助言。
- テストやレポートの方法:授業の節目に合わせ、建築士試験の過去問題を中心に宿題として課し、翌週に復習を兼ねて全員で回答案を検討する時間を設けているほか、身近な建築や設備を観察して記録するレポート課題等を課している。
- 目標の設定:建設資材の生産工場や現在工事中の現場など建築工事の現実を実務者の説明を聞きながら視察、研修することで、建築の設計から施工の流れ、実態を知る。
- 授業の進行:現場監督など建設会社の建築技術者の説明を受けながら、現在進行中の生の現場で研修する。
- 授業外時間での学習:常に身近な建物に用いられている材料や工法、部材の強度等に関心を抱き授業で学んだこととの関連性を見いだすよう助言。
- テストやレポートの方法:授業の節目に合わせ、木造軸組の実物大模型を研修したり、建築士試験の過去問等について全員で回答を検討する時間を設けているほか、身近な建築や材料に注目して記録するレポート課題等を課している。
4.学生による授業評価
令和6年度の授業評価アンケートの結果では、「総合的に授業の内容に満足したか」という問いに対し、今年度担当する全ての科目で9割以上の学生が「あてはまる」、「ややあてはまる」と回答しており、前年までの授業方法の継承が概ね適切と認められる一方、「建築構造論」では、1割程度が「予習、復習などに積極的に取り組んでいない」、「授業の進み具合が適切ではない」と回答している。
「建築構造論」では、多種多様な建築構造について、如何に関心を抱かせ理解を促すかがポイントであり、極力身近な映像やイラストを用いたスライドを多用するなど改善を試みているが、ボリュームの多さ、スピードに追随できていなかった可能性があり、改善が必要と考えている。【令和6年度授業評価アンケート結果】
5.教育改善への取り組み
FD研修会に参加し、「学生の学ぶ姿勢と学修意欲を高める授業設計学習意欲を喚起する取り組み」について学び、他学科の教職員と意見交換を行ったほか、「学生のキャリア選択」について、学科内教員及び学生との意見交換等を行った。
6.今後の目標
1) 短期的な目標
- より地場産業と融合、連携した教育の積極的な導入
- 合理的配慮が必要な学生、理解の度合いが遅れつつある学生への支援
- より理解しやすい、学習ツール(画像、動画、漫画何でも)の発掘
2) 中・長期的な目標
- 学生が自主的、継続的に学修できる環境づくり
- 最も、本専攻の学生のレベルに適したテキスト、教育ツールの発掘、あるいは開発
- 専門知識を活かしながら地場産業の活性化に貢献できるテーマに沿った研究
