教授 清水 文人
1.教育に対する責任
私は本学において 主にデザインと建築分野における、アイデアの視覚的表現、デザイン作品や建築設計に求められる表現力と企画力の育成に関する教育を担当している。中でも、「スケッチやデザインに求められる描画能力の養成・強化」に重点を置いた教育を行っている。また、企画力については「問題発見」「論理的思考による課題解決」の能力開発に力を入れており、学生に対し、デザインの論理的な展開ができるようステップごとに解説を行いながらデザインをまとめていくよう指導している。
2.教育の理念
私は、本学の教育活動において、以下の3点を重視している。
3.教育の方法
上述の教育理念を達成するため、1年生前期の必修科目の「デザイン基礎Ⅰ」では、デザイン、建築に求められる表現力の修得に向け、課題画像の正確な描画を習得するスケッチ演習を行い、1年生後期の「デザイン基礎Ⅱ」では「デザイン基礎Ⅰ」で習得した表現力に言葉からのイメージ連想の演習を通して適切なデザインを構成する演習を行っている。1年生後期の「造形基礎Ⅰ」では、紙折りによる多面体の制作をとおし、立体に対する造形的知見を育成する教育を行っている。
クリエイティブな人材育成の面から、2年生前期の「プロダクトデザインⅠ」の科目おいて、製品開発やデザイン開発といった授業のテーマの中で、学生自身がデザインの方向性や商品企画を考案し、具体的なパッケージデザインに完成させ、自分の頭で考え創造できるクリエイティブな能力の養成・強化に向けた実践的な授業を行っている。
4.学生による授業評価
2024年度の授業評価アンケートにおいては、講義系の科目のほぼすべての質問項目において全体の平均を上回っていた。授業に対する満足度(項目4)は、1年生前期の必修授業である「デザイン概論」が、3.73(講義全体の平均3.54)、2年生後期の必修授業である「デザイン史」が3.63(講義全体の平均3.54)であった。
演習系の科目においても、ほぼすべての質問項目において全体の平均を上回っていた。授業に対する満足度(項目4)は、1年生前期の必修授業である「デザイン基礎Ⅰ」が、3.91(演習全体の平均3.54)、1年生後期の選択授業である「レイアウトデザイン」が4.00(演習全体の平均3.54)であった。2年生後期の選択授業である「3Dモデリング」は、4.00(演習全体の平均3.67)であった。教養科目の「現代鳥取研究」では授業に対する満足度(項目4)は3.40であり、講義全体の平均3.67よりも低い評価となっていた。授業の進行やわかりやすさなど、他の項目は4.00と高かったことから、授業の内容と学生の求める学びとのずれがあったのかもしれないと感じており、次年度はより良い授業となるよう、内容の見直しを進めていきたい。
5.教育改善への取り組み
授業においては、どのような授業であっても、常に「問題意識」を持って授業に望んでもらえるよう工夫をしている。例えば、「デザイン概論」であれば、あるジャンルのデザイン事例を紹介し、学生に対し「なぜこのようなデザインに至ったか」を問いかけ、当てずっぽうでもいいので、「自分で考え、自分で答えを出す」ことを先に経験させてから、授業の中で説明していく進行となるよう心がけている。このような手法をとることで、ただでさえ受動的になりがちな講義授業であっても「自分の頭で考えながら教員の話を聞く」ということの習慣づけができると考えている。
また、演習系の授業でも、今学習している技術や技能が、実務上のどのようなことに役立つのか、どのような目的で学習しているのかを最初に説明し、学生に実務のイメージを持ってもらいながらすすめるよう心がけている。
6.今後の目標
1) 短期的な目標
- デザイン、建築分野における「表現力」「表現技術」のさらなる向上。
- 企業や自治体などの参画をとおしたデザイン活動の推進による能力開発、能力向上の取り組みを進める。
- 特別研究の必修化を見据えた、デザインの探究的視点による研究の指導。
2) 中・長期的な目標
- 学生の自主的企画・提案力の高度化。
現在の住居・デザイン専攻の学生の自主的な企画・提案力は、学生レベルと見ても、高いとはいえない(もちろん個人差は大きいが)。これを少なくとも4年制大学レベル(できれば建築系、デザイン系大学並みに)に引き上げる。
