准教授 青木 淳英
1.教育に対する責任
私は本学において、主に社会福祉系の教育及び保育実習(施設)を担当している。特に前者に関しては、保育・福祉専門職にとって基礎となる「社会福祉の理念や意義、制度・実施体系、子ども家庭福祉や家庭支援の現状と課題・展望」を中心に教育している。他の教員が担当する、保育・幼児教育の専門科目の内容への橋渡し役でもある。
2.教育の理念
私は本学の教育活動において、以下の4点を重視している。
3.教育の方法
上述の教育理念を達成するため、例えば1年次前期の必修科目「社会福祉」では、次のような授業を行っている。
この科目では、保育士養成課程の必修科目であることを前提として、社会福祉の基礎知識(法制度、行財政と施設、子ども家庭福祉、障がい福祉、公的扶助、権利擁護など)と保育・福祉専門職の倫理・価値観を身に着けることを目標としている。
授業冒頭には、学生に対して毎回授業の目的・達成課題を明確に伝え、前回授業の質問・感想に対する説明リアクションを行っている。保育・福祉専門職として必要な知識を得るための講義だけでなく、学んだ知識と実践との関連性をイメージしやすいように、視聴覚教材も活用している。また、事例検討などの演習を設定し、ワークシートを手掛かりにしながら、自らの意見を表明し、他者の意見を聴く機会を設けるとともに、学生ができる限り積極的かつ主体的に学び、「考える力」が伸びるよう意識して授業を行っている。
1学年全員で行う対面授業でもあるため、特にオンラインツールを積極的に活用し、学生が意見表明しやすい環境を作っている。具体的には、①Google Formsを使った確認テスト・授業アンケートによって質問・感想を募るとともに、授業評価を毎回行っている、②レジュメ・資料をGoogle Classroomで再配布し、学生がいつでも参照できるようにしている、③学生への発問や視聴覚教材の視聴時には、Google Formsを活用して学生からの意見や感想をスクリーンに投影し、全体で共有、その場で解説を加えるなどしている。
成績評価(2025年度)は、授業中課題・課題レポート・確認テスト等60%、学期末の筆記試験40%を合計して行うこととし、毎回の授業への参加・取り組み状況を重視している。
4.学生による授業評価
2025年度前期の授業評価アンケートでは、担当する保育・福祉系2科目について、ほぼすべての質問項目で全体の平均値より高い結果が出た。授業に対する総合的な満足度(項目11)の値は、1年次前期の「社会福祉」では3.48、2年次前期の必修科目「家庭支援論」では3.63(講義全体の平均3.55)であった。「社会福祉」は、「事前事後学習」への取り組み(項目2)、「到達目標」の達成(項目3)で平均を下回っている。理論、法制度・実施体系など、学生が苦手意識をもっている内容が多いこともあり、より理解しやすい教育方法を検討・実践していきたい。
5.教育改善への取り組み
授業評価アンケートの結果や、上述のGoogle Formsによる授業アンケート(学生からの質問・感想、授業評価など)を踏まえて、当該科目の授業内容や方法について振り返りを行い、次期シラバスの作成や授業の際に生かすなど、毎年度改善を加えている。例えば、授業評価アンケートで例年低めの値が出る「事前事後学習」への取り組み(項目2)について、「家庭支援論」において、毎授業で事前学習課題を提示し、その課題を用いて授業を行う反転学習に近い形式に改善した。この結果、2025年度は3.3(平均3.21)と平均値を若干上回る結果となった。今後は担当する全科目に導入する予定である。
なお、授業改善は、上記授業アンケートで聞き取った学生の意見・要望を真摯に受け止め、直ちに改善できるものは次回授業時に活かすようにしている。
6.今後の目標
1) 短期的な目標
- 保育・福祉専門職としての人間観の浸透(特に社会的に不利な立場にある人への理解促進)
- 科目間の連携(学修内容を実習系科目と結び付け、実践できる力を育成)
2) 中・長期的な目標
- 自ら主体的に取り組むための「興味・関心の広がり」を作る仕組みづくり
学生の入学動機の多くは、「保育士資格・幼稚園教諭免許状を取得するため」である。それは、ともすれば「必要な科目の単位を取るだけでよい」と考え、学期末試験の対策に終始することになりかねない。短期大学での学びは「学修」である。学生が「学修する」ためには、保育・幼児教育を起点とした関連分野や基盤となる分野への興味・関心を広げていくことが不可欠であるが、そうした学びの経験を重ねてこなかった学生も存在する。授業等を通して、関連分野を中心に、社会の出来事などへの興味・関心を広げる取組み・仕組みを検討・実践していきたい。 - 自己の成長を実感できるための仕組みづくり
学生が記入・作成したワークシートやレポート課題は、確認後に返却している。これらを学修成果物として学生が保管し、読み直すことでこれまでの授業にどのように取り組み、何を学び、身につけたのかを実感できると考えている。しかし、その成長を実感するためのガイドとなる添削が十分にできていない。改善策や他の方法を検討したい。
また、学生が保育・福祉専門職としての成長を実感できる方策のひとつとして、保育・福祉の現場や地域社会が直面している課題に対して、地域住民や関係団体と連携・協働して取り組むPBL(課題解決型学習)の充実を進めるとともに、成長の「見える化」にも取り組んでいきたい。


